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コラム

「映画的生活用品」──貧しい卓袱台で晩酌──「愛妻物語」

2012年8月1日

 例えば「愛妻物語」(51。新藤兼人)という映画がある。 新藤監督、39歳の第1作。生涯の伴侶(監督は同志という)となる乙羽信子との出会いの作品。戦時中の無名のシナリオライター時代、スクリプターの妻・孝子さんの死と、シナリオライターとして生きていく決心をする主人公を描いた自伝。最後の「一枚のハガキ」(11)まで常に〝自分〟を語ってきた監督の「私映画」だ。  

 映画は、主人公(沼崎敬太=宇野重吉)の長いモノローグで始まる。「平凡なシナリオライターの、小さな物語を聞いてください」。下宿先の娘(孝子=乙羽)と、駆け落ち同然に映画の都・京都行き。坂口監督(溝口健二=滝澤修)から試験されて書いたシナリオを、坂口から「こりゃストーリーだね、筋書の程度だね」と酷評され、愕然とする。  

 自信喪失した敬太は孝子に励まされ、1年間「近代劇全集」「世界戯曲全集」を読んで再起を図る。その間の、長屋の隣に住んでいる、友禅の下絵描き職人・安さん(殿山泰司)とのエピソードがいい。新年、貧しい卓袱台を囲んでの晩酌。安さんは酔った勢いで「何事も辛抱、若い時の苦労は買うてもしなはれ」と敬太を励ます。  

 ようやく坂口に認められる脚本が出来た時、孝子は結核で吐血する(白い洗面器の鮮烈な赤、モノクロなのに色を感じる映画の力)。最後の言葉は「あなたの一生はシナリオなの、シナリオを書くことなの」であった。(活吉)

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