TOP > 掲載企画コラム映画的生活用品[映画的生活用品]水を満たした桶担ぐ

コラム

「映画的生活用品」──水を満たした桶担ぐ──「1枚のハガキ」

2012年7月2日

 例えば「一枚のハガキ」(11。新藤兼人)という映画がある。 5月29日に100歳で亡くなった新藤監督が、98歳で撮った遺作だ。太平洋戦争末期に100人の兵士の1人として徴集され、94人が戦死して生き残った6人の内の1人という監督自身の体験を語った作品で、その6人に絞られ戦地行きを免れた方法が、上官の籤引きという不条理。そして、籤に当たって戦地行きが決まった戦友から見せられたのが、その妻から来た「一枚のハガキ」。その文面—— 「今日はお祭ですが、あなたがゐらつしやらないので何の風情もありません」  ——に象徴される戦争の無情さ、残酷さ。戦争は、兵士の命を奪うだけでなく、その妻、その家族までをも奪って破壊してしまうという事を、静かに訴えている。 戦死した夫の遺骨が入っている筈が、実は空っぽの白木の箱を抱えて妻(大竹しのぶ)は帰ってくる。大竹はやおら斧を掴んで、情念を込めて薪を叩き割る。また、台所では怒りと遣り切れなさで、包丁をまな板に打ちつけるようにして大根を無造作に輪切りにする。

  映画は悲しみで終始するが、しかし決して暗い映画で終わらせず、生き残った兵士(豊川悦司)と戦友の妻とを一緒にさせる事で、最後に「希望と再生」を託し、明るい未来を展望している。 二人は、満杯の水を満たした桶を担ぐ。天秤棒がしわむ。新藤監督の「裸の島」(60)の記憶が甦る見事なラストシーンで締め括った。(活吉)

1
 
 
Share (facebook)
 

  記事一覧に戻る 

サイト内検索

Loading

記事配信中

@COSME

日経テレコン21

日用品化粧品新聞 ダイジェスト版

Facebook

       
  x  
日用品化粧品新聞
 
Share (facebook)