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コラム

「映画的生活用品」──団欒に至らぬ寿司桶──「かぞくのくに」

2012年10月1日

 

  例えば「かぞくのくに」(12。梁英姫=ヤン・ヨンヒ)という映画がある。

  ドキュメンタリー「ディア・ピョンヤン」(05)、「愛しきソナ」(09)で自身の家族を撮った後、更に自身の実体験を基にフィクションとして描いた作品だ。

 一九九七年の夏。二十五年前、帰国事業で“地上の楽園”北朝鮮に移住した兄(井浦新)が、病気治療を理由に突然帰ってきた。十六歳だった兄は四十を過ぎた中年になっている。十歳年下の妹(安藤サクラ)も三十を過ぎた。

 その晩、両親(津嘉山正種、宮崎美子)も妹も、心を閉ざして無口な兄にどう接したらいいか、家族の団欒にはとてもならない。母だけが無理にも笑顔を作り、大きな寿司桶に盛ったちらし寿司でもてなす。しかし、ちらしには殆ど手が付けられない。

 兄は妹に、国から命じられたであろうスパイの話を持ち掛ける。妹は拒否する。そして妹は、兄に付いてきた監視員(ヤン・イクチュン)に怒りをぶちまける。「あなたも、あの国も大っ嫌い」と。監視員は応えて「あなたが嫌いなあの国で、お兄さんも、私も生きているんです。死ぬまで生きるんです」と言う。悲しみは深い。

 兄は突然、帰国を命じられる。別れ際、妹に「お前は自由に生きろ」と言う。港へ向かう車中、兄は「白いブランコ」を口ずさむ。

 この映画には、政治的メッセージを超えた、人生の理不尽さを見詰めて鋭い視点がある。      (活吉)

 
 
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