TOP > 掲載企画コラム映画的生活用品 コピー1[映画的生活用品]毎日の食事は金属の箸

コラム

「映画的生活用品」──毎日の食事は金属の箸──「ポエトリー アグネスの詩」

2012年9月3日

   例えば「ポエトリー アグネスの詩」(10。李滄東=イ・チャンドン)という映画がある。

  韓国の地方都市。きらきら光る川の流れ。上流から何かが流れてくる。女学生の死体だ。——衝撃的なオープニングだ。

 主人公は、中学三年生の孫息子と暮らす老女。孫の両親は離婚し、娘である母親は仕事で釜山にいて、たまにしか息子に会いに来ないようだ。介護ヘルパーの仕事がささやかな収入だが、天真爛漫で毎日お洒落な服を着て、朗らかで話好きだ。

 そんな彼女に降り懸るアルツハイマー初期症状の告知。でもあまり意に介してないようで、貼り紙を見て衝動的に詩の教室に通い始める。これが映画の原題「詩」の所以だ(因みにハングルでも「詩」は「シ」と発音する)。言葉を忘れていく病と、言葉を練って紡ぐ事で成り立つ詩という、相反する世界の相剋が面白い。

 更に彼女を襲うのが、少女を自殺に追い込んだ暴行グループの一人が孫だという疑念。冒頭、川を流れてきたのがこの少女であり、邦題の「アグネス」がそのクリスチャン名だ。毎日の食事を与えながら、その事を孫に糺しても素っ気ない返事をするだけ。金属の箸で二、三度おかずを摘んだだけで逃げるように出掛けてしまう。

 祖母は少女の足跡を辿り、孫らが奪った少女の未来を詠んだ詩を残す。少女が入水した川の畔に立つ。少女に同化するように、祖母は消えていなくなる。(活吉)

 

 
 
記事一覧に戻る
 

サイト内検索

Loading

記事配信中

@COSME

日経テレコン21

日用品化粧品新聞 ダイジェスト版

Facebook

       
  x  
日用品化粧品新聞
 
Share (facebook)